Gift

モノガタリ

R246に出るとフロントガラス越しに満月が見えた。

旨いコーヒーを飲みたくなって、昔コーヒー豆を買っていたお店に向かった。数ヶ月ぶりに訪れるその街は、相変わらず活気に満ちていた。ごちゃごちゃと乱雑に軒を連ねる色々なお店達。しばらく雑踏の中を進むと、以前とかわらぬ様子で「モルディブ」はそこにあった。

 

店内には香ばしい香りが立ちこめており、おじさんが入り口近くの焙煎機に向かって腰をかがめている。コーヒー豆はごく薄い茶色をしていて、まだ焙煎が始まったばかりである事をうかがわせる。今月のおすすめだという「東ティモール」の豆を200g買い求めた。

 

オーストラリアのすぐ上に位置するこの小さな国では、90年代後半まで紛争が続いて、2002年5月に独立国家になったという。独立当時、500ドルというこの国のGDPは日本の約60分の1に過ぎず、コーヒーの輸出は国の重要な収入源となっている。

 

生産者支援やフェアトレードという言葉は、コーヒーやコットンなどのオーガニック製品を購入するときに良く耳にする。購入したコーヒー600円分の代価は、おじさんの焙煎手数料になり、輸出入業者の手間賃となり、いくつもの人手を通じてコーヒー生産者の元へ届くのだろう。写真で見る限りに過ぎないが、この国のコーヒー生産者の笑顔は活力に満ちている。赤道近くの小さな国で作られたコーヒーは、休日の夜に大切な時間をプレゼントしてくれた。

 

東ティモールで栽培されるコーヒーの木から、今日の満月はどんなふうに見えるのだろうか。

2006/02/12

 

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