ねぇ、ルクス。あそこにいる人が頭につけるのって何?
ヘッドランプね。ヘッデンとか、ヘッドライトという場合もあるわ。
ふーん、両手が空くから夜中にポテチを探して食べるのに良さそうね。
その目的で使うのはあなたくらいだと思うわ。。。
初めてのヘッドランプ・ヘッドライトの選び方
以前の記事では、手持ち式の懐中電灯、フラッシュライトの選び方について説明しました。
この記事では、頭に固定するタイプのライトである、ヘッドランプについて選び方のポイントを書いてみます。
ヘッドランプも用途、使用条件により最適な製品は異なりますが、ここでは今までヘッドランプを購入したことが無い、どんな点を見れば良いか分からないという方に向けて、どのようなヘッドランプを選べば良いかについて、一つの考えを書いてみます。
こちらも先に結論から
ヘッドランプを選ぶ際の3つのポイント
- 電源投入時の明るさ → 暗めスタート
- 配光、照射距離のバランス → 広角なフラッド気味配光
- 電池本数、電池タイプ → 単3 1本
それでは、行ってみましょう!
時間が無い、手っ取り早くおすすめだけ知りたい方はここをクリック。
ヘッドランプを使ってみよう! – Let’s use a headlamp!
皆さんはヘッドランプ(ヘッドライト、ヘッデン)はお持ちでしょうか?
私は夜間の登山やトレイルランはしませんが、キャンプやハイキングなどでヘッドランプを使っています。
以前、懐中電灯、フラッシュライトの選び方という事で、フラッシュライトについての記事を書きました。今回は、はじめてヘッドランプを購入する方に向けて、今までいくつかのヘッドランプを使ってきた中で、感じた事を書きたいと思います。
ハンドライトのような派手さ(?)は無いですが、両手が空くのでヘッドランプはとても便利ですよ。
頭部につけることに抵抗がある方もいらっしゃるかもしれませんが、キャンプや散歩程度であれば首から下げて使う方が楽だったりします。
今回記載するヘッドランプの選び方は、キャンプや散歩、日常使用において、今までヘッドランプを購入したことが無い方が、どのような基準でヘッドランプを選んだら良いのか、という観点で書いています。
夜間工事や登山、トレイルランニングなど、特定用途でのヘッドランプ選びではまた違った見方もありますが、ヘッドランプの選び方としては、ある程度共通した項目もあるかと思います。
登山やトレイルランニングされる方が書いたヘッドライトレビュー記事などと合わせて読むと、何か発見があるかもしれません。
頭部にゴムバンドなどで装着するライトをヘッドランプ、ヘッドライトと呼称しますが、メーカーによって表記はバラバラのようです。
Headlamp/ヘッドランプ:PETZL, BLACKDIAMOND, SUREFIRE, STREAMLIGHT, LEDLENSER, FENIX, NITECORE 他
Headlight/ヘッドライト:GENTOS、LEDLENSERジャパン
どんなヘッドランプが良い? – What is best headlamp?
では、どのようなヘッドランプを選ぶべきでしょうか?
ライトを選ぶ際、明るさ以外に注意するべき点はいくつかありますが、普段から携行出来るEDCライトを選ぶ際のポイントとして、別記事で以下の5点に着目しました。
EDC(常時携行)ライトを選ぶ際の5つのポイント
- 信用のおける製品か?
- 普段携行できるサイズ、重量か?
- 電池の持ちは十分か?
- 電池は入手しやすいか?
- 誰でも簡単に操作できるか?
基本的には、ヘッドランプのチェックポイントもハンドライトと変わりませんが、ヘッドランプを購入するときには、以下3点を追加で確認する事が多いです。
ヘッドランプを選ぶ際の3つのポイント
- 電源投入時の明るさ
- 配光、照射距離のバランス
- 電池本数、電池タイプ
こちらも順に見ていきましょう。
電源投入時の明るさ
ヘッドランプの点灯方式はモデルによって、電源投入時に 1.常に最小の明るさで点灯するモデル、2.常に最大の明るさで点灯するモデル、3.前回消灯前と同じ明るさで点灯するモデルなどがあります。
こちらも使用用途によりますが、私は1の低照度、Lowスタートのヘッドランプをおすすめします。
なぜLowスタートが良い?
暗闇では暗順応(あんじゅんのう)といって目が徐々に暗闇に慣れていき、最初見えなかった明るさでも物が見えるようになります。
逆に、暗い場所にしばらく過ごした後、明るい場所に移動したり、急に明かりが点灯した場合、周りが見えなくなりますが、徐々に明るさに慣れ、周りが見えるようになります。(明順応)
明順応は数分で完了するのに対して、暗順応には30分から1時間程度かかります。
そのため、一度暗順応したあとは、なるべく明るい光を避け、暗順応を保持した方が良いです。
たとえばテント泊で就寝中トイレに起きるような場合、高照度、Hiスタートのヘッドランプでは発光面を覆ったりと、余計な手間がかかります。漏れた光が、一緒にいる仲間の就寝を妨げてしまう場合もあります。
また、ヘッドランプのモデルによっては、前回照度を記憶するメモリー機能付きの製品もありますが、使用者本人が前回使用時の明るさを覚えていない事もあります。(キャンプで飲酒したときなど、私は良く忘れます!)
常にLowスタートのヘッドランプでは、何も考えずに最低限必要な光を確保出来るため便利(楽)です。
逆に、周囲が明るかったり、ある程度の明るさでヘッドランプを使いたいような場合は、メモリ機能付きのヘッドランプやHiスタートのヘッドランプの方が、余計な調光操作が減るため楽な場合もあります。
-Lowスタートのヘッドランプは暗順応を壊しにくく、調光操作無く必要最低限度の明るさを確保出来る
-点灯する度にある程度の明るさが必要な場合は、メモリ機能付きヘッドランプ、Hiスタートのヘッドランプを選択するのもあり
配光、照射距離のバランス
用途や好みにもよりますが、ヘッドランプの場合は、ある一点を中心に明るく照らすような配光は使いにくく、視界全体がなるべく均一に明るくなるような配光が使いやすいです。
ヘッドランプは頭部や首にかけて使用するため、手持ちのフラッシュライトよりも一般的に可動範囲は狭くなります。そのため、配光はより重要な要素となります。
均一な照射面が得られる配光の事を、光が「あふれる(=Flood)」という意味から、フラッドな配光と呼びます。
それとは反対に、比較的狭い照射範囲を照らすような配光をスポットな配光と呼びます。
同一光束、ルーメン値の場合、フラッド配光はスポット配光よりも照度が落ち、照射距離も短くなってしまうため、配光と照射距離のバランスがポイントとなります。
真っ暗闇の場合、満月程度の明るさ(0.25ルクス)があれば、手元、足元程度の確認は可能です。
照射範囲の狭い事をスポット配光、照射範囲が広い事をフラッド配光と説明しましたが、スポット気味の配光、フラッド気味の配光と考えて頂いた方がイメージに合うと思います。
スポット配光でも、中心のスポットの周りに広がる明るい部分(スピル)が広く、スポット部分との明るさの差があまりないような配光も使いやすく、そのようなライトの方が製品数としては多いと思います。
なぜフラッド配光が良い?
LEDなど光源から放たれる光束が同一の場合、その光を集めて狭い範囲に集光した方が、光が当たった表面は明るくなり、光の到達距離も伸びます。
フラッド配光ではその逆に、極端な集光をしない分、光が当たった表面はあまり明るくなりませんし、光の到達点もスポット配光のライトに比べると短くなります。
ではなぜ見た目上暗く感じるフラッド配光が良いのでしょうか?
光束[ルーメン]、光度[カンデラ]などの単位については別記事にまとめますが、光源からの光束が一定の場合、集光した方が照射範囲は狭くなり、光度、照射距離も大きくなります。
ホースから出る水量が一定の場合、ホース出口を指で狭めて水の勢いを増し、水を遠くに飛ばすようなイメージです。
こちらに簡単な図解があります。
見た目上、スポット配光にした方が狭い範囲に光が集中するため明るく感じられますが、照射範囲が狭いことで照射範囲以外が見にくくなり、全容の把握が困難になります。
ポイント1では、暗順応を確保するためにLowスタートが良いことを説明をしました。スポット配光の場合、スポット部分の明るさで暗順応するため、スポット範囲以外の暗い箇所に暗順応するには時間がかかります。その結果として、スポット範囲外が見えにくくなります。
多少極端なたとえですが、スポット配光のライトはトイレットペーバーの芯越しに周囲を見る事を想像するとわかりやすいかもしれません。(芯の中心以外は見えませんよね)
そのため暗闇では、暗順応を有効に働かせる事で、必要最低限度の明るさで行動が可能になります。
フラッド配光にする事で視界全体での明暗差が少なくなり、同一ルーメン値の場合はスポット配光よりも暗順応が壊れにくくなります。
また、ヘッドランプを頭部に装着する場合、フラッド配光のライトでは、照射範囲が広いため、頭部を頻繁に動かさなくてもある程度の視界が確保されたまま歩いたり、作業する事ができます。
スポット配光のライトでは照射範囲が狭いため、遠方のある一点を照らすような用途には適していますが、ヘッドランプの場合はこまめに頭部を動かして、照射範囲を調整する必要があります。
・同一光束の場合、フラッド配光はスポット配光よりも暗順応が壊れにくい
・フラッド配光は照射範囲が広いため、頭部、首の運動量を削減できる
・フラッド配光は遠方照射する用途には向かない
共同作業場などでは調光して光を絞るなど、使用環境によって適切な明るさを確保することが大切です。
電池本数、電池タイプ
フラッシュライトと同じですが、運用・管理面で、単三電池を1本使うライトが楽です。
また、頭部に装着するヘッドランプの場合、軽ければ軽いほど体の負担も軽減できます。
登山用品店などでは、単四 3本、4本などを使ったモデル、リチウムイオン電池内蔵モデルなどもリリースされており、単三 1本モデルよりもルーメン値、光束、ランタイムに優れているモデルが多いようです。
過去、単四電池を複数本使用する登山用品ブランドのヘッドライトも購入、使用していましたが、電池入れ替えや予備電池準備の煩雑さから、現在は単三 1本モデルを常用するようになりました。
なぜ単三 1本モデルが良い?
ガソリンランタンやLEDランタンでキャンプサイト全体を照らしつつ、サブでヘッドランプを用意するような場合、洗い場に行ったり、トイレに行ったりと、ヘッドランプは個人個人が用意した方がなにかと便利です。
たとえば四人家族の場合、単四 3本モデルでは、3本*4人で合計12本の単四電池が必要になります。
単三 1本モデルでは、単三 4本あれば四人分の明かりをまかなうことができます。予備電池の事を考えても、電池本数は少ない方が運用・管理面では楽です。
また、内蔵リチウムイオン充電池モデルは、使用前に充電しておくことで、常にフル充電状態となり、予備電池を減らせるメリットや、設計の自由度が上がって筐体がコンパクトになるメリットがあります。
その一方で、充電準備期間が無く、ヘッドランプが急に必要になった場合などには即対応出来ず、充電中はヘッドランプを使用する事ができないデメリットも発生します。
そのため、はじめてヘッドランプを購入する場合には、内蔵充電池モデルよりも、通常の乾電池を使用するモデルの方が融通が利く場合が多いです。ランニングコストが気になる場合は、充電池を取り外し可能なモデルや、エネループなど充電池対応のヘッドランプを選ぶ事も良いでしょう。
また、寒い場所で使用するような場合は、少し値段は張りますが、リチウム一次単三電池を使うことで、低温による電池性能低下(=電圧降下によるランタイム減少や光束低下)を抑えられます。
-単三 1本モデルは運用・管理が楽 重量も軽量な事が多い
-内蔵充電池モデルと異なり、予備電池だけ用意しておけば、いつでも使用する事が可能
-単三 1本のため、ランタイム、明るさなどにはある程度制限を受ける
初めてのヘッドランプとして – Recommended headlamp
用途と使用環境によってベストなヘッドランプは異なりますが、前項の5つ+3つのポイントを踏まえて、はじめてヘッドランプを購入する場合におすすめできる製品をあげたいと思います。
(今回の選定基準はキャンプや散歩、日常使用において、今までヘッドランプを購入したことが無い方向けのモデルになります。)
1,タジマ M075D
・単3 * 1本
・5ルーメン/18時間、25ルーメン/8.5時間、70ルーメン/7時間(常時Lowスタート)
・幅70mm * 奥行き 46mm 37g
・2000円程度
メーカーHPより、Hiは1時間程度で初期照度の1/4付近まで落ちてしまいますが、手を出しやすい価格のため、初めての個人装備としておすすめできます。
通電しないようロックアウトも出来るので、防災持ち出し袋に入れておく用途でも良いと思います。
2,モンベル コンパクトヘッドランプ
・単3 * 1本
・5ルーメン/80時間、15ルーメン/73時間、45ルーメン/27時間、0.5Hz点滅(常時Lowスタート)
・幅65mm * 奥行き 36mm 46g
・2300円程度
この価格でフラッド気味の電球色(Low)を備えていることが一番のポイント
複眼のLEDデザインもなかなかカッコいいです
どちらもクセが少なく使いやすいヘッドランプですが、ヘッドバンドの強度含め初めてのヘッドランプとしての総合性能ではタジマ、電球色の柔らかい雰囲気が好きな方はモンベルで良いと思います。
夜は一号路の登り始め箇所と頂上手前は外灯も無く真っ暗になります。暗順応さえ出来ていれば、足場が良いことも有りMid 15-25ルーメン程度あれば問題無く登山できました。
(モンベルのコンパクトヘッドランプは、高尾山口駅近くの売店にも売っていました)
終わりに – You will find a piece of light
他にもヘッドランプとしてふさわしい製品はいくつもありますが、自分が今まで実際に購入・使用した中で、はじめてヘッドランプを購入する友人に勧めるとしたら何が良いのかを考え、2つのライトをあげてみました。(本当はメイン使用中のZebra Lightもあげたかったのですが、現時点で入手性が悪いため除外しました)
手持ちのフラッシュライトとヘッドランプは、お互いに足りないところを補完するように使うと利便性が増します。たとえば、フラッド気味のヘッドランプと、スポット気味のフラッシュライトを組み合わせることで、近距離から中遠距離までまんべんなく照らすことが可能となります。
私は外光が無い環境でヘッドランプを使用する事が多いため、光束の大きな明るいモデル、Hiスタートのモデルは除外しましたが、場合によっては周囲の環境光が多く、今回紹介したヘッドランプでは光束が不足する場合も考えられます。
また、私が家族分の電灯管理もしており、使用電池本数が少ないライトの方が楽なことから、そのようなライトを購入する事が多くなります。
もし、電池管理が面倒ではないなら、複数本の電池を使ったモデルの方が明るさやランタイムなど、選択肢が広がる場合もあります。
そのような場合は、使用電池や本体サイズの優先度を変更し、使用環境、条件に合ったヘッドランプを探す必要があります。
もしご自分で電気店、ホームセンターなどへヘッドランプを探しに行く場合、先ほどの5+3のポイントを目安にする事で、ヘッドランプとしてハズレを引く可能性は下がると思います。
または、ez-liteなどのライト専門店に足を運び、相談してみるのも一案でしょう。
すてきなヘッドランプと出会えることを祈っています。
「光の加護があらんことを ルーメン!」
2018/10/23
追記 – Appendix
ブログを見て頂いた AGECアウトドア(@AGEC_info)のライターの一人であるSさんより、以下のコメントを頂きました。Sさんはヘッドランプをクライミングで使われているそうです。
初めてのヘッドランプからは一歩進んで、ある用途(クライミング)に特化した場合の選択基準ですが、霧中や低出力で行動をする際ヘッドランプに求める意見は参考になります。
了承を頂きましたので、クライミングでのヘッドランプ使用者の貴重な意見という事で、こちらに掲載させていただきます。
キャンプとか軽い散歩位の使い方しかしないから、Lowスタートのフラッド配光のヘッデンが好き。
登山とかガチでヘッデン使ってる人はどんな事優先してるのだろう?
— チリトマ (@chilitoma) 2018年10月22日
今知ったのですがブログ始めたのですね!よろしくお願いします。お互い頑張りましょう!
丁度非マニアの友人(主に縦走系)と数週間前にヘッデンについて話してたので長文失礼します。
主に軽さとランタイムと低温耐性(積雪期)重視です。2週間毎日日の出前に数時間行動したりとかで高効率低出力派です。— AGECアウトドア (@AGEC_info) 2018年10月25日
電池は10日持つのが基準です苦笑。基本的に重量に対するパフォーマンス重視。なので樹脂ボディが主流です。ロックアウト機能やLowスタートのUIなどは同意見です。ちなみに皆角度調整機能が壊れるって文句言いますね。あとは雪崩ビーコンと電池共通にできると便利とか言ってます。
— AGECアウトドア (@AGEC_info) 2018年10月25日
やはり大きいのはコストでマニアじゃないとヘッデンにあんまりお金をかけません。なんで山道具メーカーのヘッデンってあんなに高いんでしょうね?真面目に開発してるのはペツルだけだと思います。コストを言うのならジェントス等のホムセンメーカー選べばいいのに。
— AGECアウトドア (@AGEC_info) 2018年10月25日
使用頻度も高いのでランニングコストも重要ですがエネループはどうしても重さの割に容量不足で皆アルカリ使って苦しんでます。みんな18650を導入した方が絶対幸せになれるのになと思います。友人にFHB+OライトS20を2週間ほど貸してますがどういう意見が来るか楽しみです。
— AGECアウトドア (@AGEC_info) 2018年10月25日
自分の場合は重さに対する機能を求めたりするのは同じですが、縦走よりクライミング派でマニアってこともあり高出力には寛容です。夜間行動はパワーがあった方がルートファインディングが楽です。あくまでも体感ですが、トータルバランスだと500lm位を超え始めると段々デメリットが目立つ気もします。
— AGECアウトドア (@AGEC_info) 2018年10月25日
配光に関しては好みの部分も大きいです。近距離ではフラッドが使いやすいですが、行動中にガスったときは視界全体が真っ白になります。ランタイムが重要な場合は使いやすさを棄ててでも低出力で中心照度を確保できるシャープな配光を選ぶ場合もあります。
— AGECアウトドア (@AGEC_info) 2018年10月25日
8月に南アの山小屋でバイトした時にTJARの選手が通過していきましたがLEDレンザ―H8Rやクラルスなど18650を使ったハイパワー機も目立ちました。
ちなみにアウトドアで一番ヤバいヘッデンユーザーはケイビングの人たちだと思います笑。
超長文失礼しました。S— AGECアウトドア (@AGEC_info) 2018年10月25日
Copyright secured by Digiprove © 2018
コメント